原子核三者若手  夏の学校 2010

〜素粒子論パート〜

講義A(弦理論)

高柳 匡(IPMU)「AdS/CFT対応入門」

本講義では、超弦理論において近年最も中心的なテーマであるAdS/CFT対応に関して入門的な解説を行いたいと思う。超弦理論自体やD-braneやゲージ理論の基本的な事柄の説明なども含めながら、AdS/CFT対応とは何なのか?どう役に立つのか?を具体的に解説したい。またこの対応が、ブラックホールのエントロピーの量子論的な理解を与えることも述べたい。さらにブラックホールのエントロピーの拡張とも考えられるエンタングルメント・エントロピーとそのAdS/CFTにおける理解にも触れたい。残った時間で、最近の話題としてAdS/CFT対応の超伝導への応用について議論したい。

講義B(場の理論)

石川 洋(東北大学)「2次元共形場理論の境界状態」

共形場理論とは共形変換(局所的なスケール変換)のもとで不変な場の理論のことです。境界のある2次元面上で定義された共形場理論は弦理論や物性理論といった分野に応用されるとともに、それ自身、豊かな構造を持っています。この講義では、場の理論の初歩を前提として、境界のある場合の共形場理論の基礎的事項、特に共形不変な境界状態の構成および分類について解説を行います。

講義C(現象論)

濱口 幸一(東京大学)「超対称性理論と暗黒物質」

素粒子の標準模型を超える物理の最有力候補の1つとして、超対称性理論があります。この講義では、超対称性理論について簡単に説明した後、それを標準模型に適用した超対称標準模型について解説し、特に暗黒物質に焦点を当てて最近のトピックを紹介する予定です。暗黒物質については、ここ1、2年、観測・実験が飛躍的に進んでいますので、出来るだけ、夏の学校開催時での最新の動向を踏まえてお話したいと思います。

三者共通講義

井上 邦雄(東北大学)「ニュートリノ研究の展望」

軽いニュートリノ質量や宇宙の物質優勢といった素粒子研究・宇宙研究の重要な課題に対して、ニュートリノ振動実験やニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊探索実験が注目されており、今後数年の間に、多くのプロジェクトが実験を開始しようとしている。同時に、ニュートリノを利用した地球物理・原子炉モニターなどの分野も新しく根付いてきている。これらの発展について特に日本の研究を中心に解説し、将来を展望する。